interview

もっと多くの方に、振袖をたくさん着て欲しい -着付け師 村井昭子さん①

着物、着たいなあ。 

 

そんなことをぼんやり思いながら、なかなか着る機会のないまま毎日が過ぎていく。

いつか、時間ができたら着付けを習ってみよう。 おばあちゃんが、お母さんが持っている着物を着られるようになりたい。

そう思っている「ハハトコ世代」の皆様、多いのではないでしょうか?

今回は着付け師 村井昭子さんにお話を伺いました。

『母娘と着物』というテーマで、3週にわたってお送りいたします。


本日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。 着付け師としてご活躍の村井さんに、着物について、そして「オリエンタル和装」について教えていただきたいと思います。

 

----------まず、どうして着付け師というお仕事を始められたのですか?

 

これは私の成人式の振袖です。

この着物がとっても気に入って、すごくすごく母にねだって買ってもらったものなんです。 母の予算からはとってもオーバーしていたと思いますが、「もう他に何もいらないから!」と頼んで買ってもらいました。

この着物、ありがたいことに20回以上着ているんです。

なぜそれほどたくさん着たのかというと、着物を着ると褒めていただけるんですよね。 歩いているだけでも、バス停でバスを待っているときでも、知らない人からも声をかけられました。 「いやー、素敵だね!」「綺麗だね!」って。

こんな風に言ってもらえることが、何て嬉しいんだろうと思って。 その時の気持ちが、今でも胸に焼き付いています。

そのような経験の後、花嫁修行で着付けを習わせてもらったことが着付け師になったきっかけです。

着付けを習っていて感動したのは、ジーンズで元気に来られた方が着物を着つけてもらって帰るときには、内またになって大和撫子のような女性らしい歩き方で、「先生ありがとうございました」って帰って行かれる姿を見られることです。

「着物の力ってすごいな。この着物の力を借りたら、みんな美しくなるよ!」と思ったのも、この仕事を続けている理由ですね。

 

----------今、様々なメディアで取り上げられている「オリエンタル和装」とはどのようなものでしょうか?

 

オリエンタル和装とは、着物を切ったり縫い直したりすることなくドレスに変身させるものです。

このオリエンタル和装をお召しになられたこれまでの花嫁様には多くの心温まるストーリーがあります。 その中でも印象に残りましたのがあるお嬢様の結婚式でした。

そのお嬢様のおばあちゃまは、このお振袖をいつかお孫さんにも…とお考えだったようなのですが、そのお嬢様は「こんな派手なの嫌だわ」と言ってご自分のお好きなお振袖をレンタルされて成人式に出られたそうなんです。

そのお嬢様のご結婚が決まられたとき、ウエディングドレスは好みのものがばっちりと決まったんですけど、カクテルドレスがなかなか気に入ったものがなくて決まらなかったそうなんですね。 実はそのお嬢様は我が家の娘のお友達で、お母さまとも親しくさせていただいていることもあり、「オリエンタル和装を是非お勧めしたいんだけど、お母様のお振袖って可愛らしかったわよね?」とご提案させていただいたんです。

披露宴ではまず振袖で入場してくださって、そのあとわずか10分ほどでオリエンタル和装にお支度させていただいたんですよ。 そのときのおばあちゃまやご列席の皆様の喜びが本当に支えになり、こんなに喜んでいただけるのなら、多くの皆様に丁寧にこのオリエンタル和装をお伝えしていきたいなと思ったんです。

 

----------なぜオリエンタル和装をはじめられたのですか?

 

やはり、振袖があまりにも勿体ないというのが一番ですよね。

振袖には日本の伝統技術満載の素晴らしい染め織だったり、和裁師さんの丁寧なお仕事が詰まっていますが、なかなか着る機会がないですよね。

もっと多くの方に、たくさん着て欲しいという想いがあります。

ですが私は着付け師なので、和裁師さんが魂を込めて仕立ててくださった着物にハサミを入れたり、仕立て直したりすることはできないんです。

だからこそ、着物に手を入れずに着ていただける方法を考えていました。

30年程前から私は、浴衣をミニスカートのように短く着付けしてスニーカーとハイソックスをはくようなスタイルにしたり、お着物を2枚重ねて片方を外してハイヒールを履いてもらうスタイルなど、ちょっとした遊び心で着付けをする機会が何度かありました。

そこで、着物のまま進化させたり変化させることもできるんだ、一番大事なことは「着物」に触れてもらうことなんだという想いに気づき、それがオリエンタル和装につながりました。

 

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